このたびの台風第15号、19号により、被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。
今回のコラムでは、地震の際に木造住宅がどのように
倒壊・破損してしまうのか、その原因についてお話したいと思います。
原因が分かっていれば対策を立てられます。
部分ごとにポイントを押さえて説明していきますので一緒に確認していきましょう。
目次:
大地震の際の家屋の倒壊、原因のひとつめは、壁にあります。
壁の中でも、耐力壁と呼ばれる強度の高い壁が家の中に適切に配置されているのなら問題はありません。
良くないのは、逆の場合です。つまり、壁の強度・量・配置に不備のあるケース。
まず、壁の強度です。耐震性の高い耐力壁の中には、構造用合板や筋交いといった補強が施されています。
反対に構造用合板や筋交いがない壁は地震の衝撃に対して弱く、破損の原因となり得ます。
また耐力壁であっても、湿気などによる腐食があったり、
シロアリによる蟻害を受けたりしているものもだと本来の強度が損なわれている可能性があり危険です。
次に量と配置です。一般的に壁の量が少ない建物は、耐震性が低いと言われています。
また、必要な壁量を満たしていても、その配置にむらがある場合は、
地震で受ける負担が一部に集中してしまい、そこから破損・倒壊につながる危険性があります。
【地震の際に危険な壁】
・構造用合板、筋交いなどが入っていない壁
・腐食や蟻害が進んでいる壁
・必要な量を満たしていない壁
・家の中にバランスよく配置されていない壁
大地震の際の家屋の倒壊、原因のふたつめは、接合部の破損です。
接合部とは、基礎と柱や、柱と梁をつなぎ合わせている箇所のこと。
この部分がしっかりと固定されていないと、地震の際に引き抜けなどが生じ、
そこから建物の倒壊につながってしまいます。
平成12年6月以降に建築された建物については通常、
接合部にホールダウン金物という金属部品を施工し、補強することが決められています。
しかし中にはこのホールダウン金物のような接合金物が施工されておらず、
十分な耐震性能を有していない住宅も存在します。
事実、平成28年の熊本地震でも、接合部の仕様が不十分であったために
倒壊してしまった木造住宅が数多く見られました。
【地震の際に危険な接合部】
ホールダウン金物などの接合金物で固定されていない接合部
大地震の際の家屋の倒壊、さいごの原因は、屋根の重みです。
建築物は通常、基礎と柱で屋根の重みを支えています。
そこへ地震の揺れが加わると、屋根の重みによる負担が増し、
結果、支えきれなくなったところから倒壊してしまうという仕組みです。
特に重い屋根ほど揺れた際に遠心力がかかり、
より大きなダメージを建物に与えるといわれています。
そのため建物の耐震性を上げるためには、
スレート屋根やガルバリウム鋼板などの比較的軽い屋根材を選ぶのが良いとされています。
瓦屋根はスレートやガルバリウム鋼板よりも重い素材ですが、
防災瓦という剛性に富んだものを選択すれば、耐震性を確保することも可能です。
【地震の際に危険な屋根】
重い屋根材を使用した屋根
地震に備えて知っておきたい木造住宅倒壊の原因・まとめ
木造住宅が倒壊する原因を壁、接合部、屋根の3点から解説いたしました。
いかがでしたでしょうか。
実際には地形の変動や隣接する家屋の倒壊など、もっと様々な原因が絡み合い、
木造住宅に被害をもたらすことが考えられます。
いずれにせよ、我々にできることは日頃の備えをしっかりとしておくことです。
少しでも不安のある方は、専門家による耐震診断を受け
必要に応じて家屋の耐震補強を進めましょう。
参考文献
国土交通省住宅局『「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント』
政府広報オンライン『自宅や周囲にある建物は大丈夫?住宅・建築物の耐震化のススメ』