ウッドピタの地震防災コラム

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地震2019年9月2日

長周期地震動と短周期地震動 建物が受ける被害の違い

長周期地震動と短周期地震動 建物が受ける被害の違い。

こんにちは。
連日の猛暑が続いていますが、夏バテなどされておりませんか。暑さも立派な自然災害です。
まだまだ暑さが続くかと思われますが、こまめな水分・塩分補給を心掛け、お体には十分に気をつけて、この夏を乗り切ってください。
さて、今回のコラムは長周期地震動短周期地震動の違いについてです。
地震関連の報道でもしばしば耳にする長周期地震動と短周期地震動という言葉ですが、
それぞれどのようなものなのか。建物が受ける被害の違いなどをご説明していきます。

目次:

↓ 建物の固有周期と共振とは

↓ 東日本大震災で計測された長周期地震動

↓ 阪神淡路大震災で計測された短周期地震動

↓ 長周期地震動と短周期地震動 建物が受ける被害の違い・まとめ

建物の固有周期と共振とは

今回の本題である長周期地震動と短周期地震動の話をする前に、
まずは地震によって建物が衝撃を受けるメカニズムについてご説明しなくてはなりません。
地震が起きると、様々な周期の揺れが発生します。
周期とは、地震動による揺れが1往復するのにかかる時間のことを指します。
一方、建物には揺れやすい周期があり、それを固有周期と言います。
固有周期は、建物の高さ剛性によってそれぞれ異なります。
地震の周期と建物の固有周期が一致してしまうと、共振の状態となり、
建物はより大きく揺れることになるのです。

東日本大震災で観測された長周期地震動

長周期地震動とは文字通り、周期の長い地震動です。
長周期地震動の特徴は、ゆっくりと大きな揺れ
地震の規模を表すマグニチュードが大きいほど、そして震源が浅いほど、長周期地震動の生じる可能性が高まります。長周期地震動と共振しやすいのは高いビルです。 
とくに高層階になるほど揺れは増幅し、家具転倒などの危険性が高まります。
また、遠くまで揺れが伝わるのも長周期地震動の怖さです。
東日本大震災でもこの長周期地震動が観測され、震源から離れた大阪のビルでもエレベーターが停止するということがありました。
さらに長周期地震動によって、石油タンクが揺れると液体の表面が大きくうねるスロッシングと呼ばれる現象が生じ、石油の漏洩、それに伴う火災の危険性も高まります。

【長周期地震動】
・ゆっくりとしていて大きな揺れの周期
・遠くまで揺れが伝わる
・高層階ほど揺れやすい⇔低層階は揺れにくい

阪神淡路大震災で計測された短周期地震動

短周期地震動は周期の短い地震動です。固い地盤ほど伝わりやすい特性があります。
人間が揺れを感じやすいのは、この短周期地震動による揺れです。
低い建物ほど短周期地震動と共鳴しやすく、木造住宅が損壊などの被害を受けるのはこの短周期地震動による揺れが原因であるといえます。
短周期地震動の中でも1秒~2秒周期の地震動はキラーパルスと呼ばれ、中層階のビルや家屋は特にこの周期の揺れに弱いです。
阪神淡路大震災での家屋被害の多くはこのキラーパルスによるものだとされており、発生が懸念されている首都直下型地震など直下型の地震でもキラーパルスが生じやすくなります。

【短周期地震動】
・短く小刻みな揺れの周期
・固い地盤ほど揺れが伝わる
・中層階や家屋が被害を受けやすい⇔高層階になるほど振動を受け流して揺れにくい

長周期地震動・短周期地震動の違い

長周期地震動と短周期地震動 建物が受ける被害の違い・まとめ

ひとくちに地震といっても、その揺れ方に違いがあるということをお分かりいただけたでしょうか。
職場や住まいが高層階という人は、長周期地震動に備えて家具の固定を。
直下型地震が懸念される地域の方は短周期地震動に備えて家屋の補強にいち早く取り組むべきでしょう。

参考文献
(1) 気象庁webサイト『長周期地震動に関する基礎知識』
(2) 総務省消防庁『東日本大震災記録集』