こんにちは。
平成の時代が幕を閉じ、いよいよ令和がスタートしました。
思い返せば平成は、阪神淡路大震災や東日本大震災など全国各地での大地震、
雲仙普賢岳や御嶽山の噴火、東海豪雨や西日本豪雨など、あげればきりがないほど数多くの自然災害に見舞われた時代でもありました。
自然災害は防ぐことはできません。しかし、これら大災害での経験・教訓を生かし、
令和は自然災害による被害を少しでも抑えられるよう
私どもも防災活動に引き続き力を入れて取り組んでいきたいと思います。
さて今回は、平成最後となった平成30年版の防災白書より
国の最新災害対策についてご紹介していきます。
目次:
防災措置と防災計画を報告する『防災白書』
皆さんは防災白書という言葉を聞いたことがありますか?
防災白書とは、内閣府が国会にこれまで『防災に関してとった措置の概況』の記録と
今後の『防災に関する計画』についての報告を行うためにまとめた法定報告書のことです。
過去の災害発生時にどのような対応をしたのか、そして今後発生が予期される災害に関しての
対応策について取りまとめられているものです。
1959年の伊勢湾台風を契機に、防災は政府が組織的・継続的に取り組むべき課題という
認識となり、1961年に災害対策基本法が制定され、
この規定に基づいて1963年から防災白書の発行が始まりました。
防災白書はもともと国会に報告を行うためのものではありますが、
一般の方が見ても分かりやすい内容にまとめられているのが特長です。
書店で買ったり、内閣府のwebサイトから無料でダウンロードすることもできるので、
日本の防災体制や最新の防災動向などについて誰でも容易に把握することができます。
今回は公表されている防災白書の中でも最も新しい平成30年版から
特筆すべき項目についてご紹介をしていきたいと思います。
『大規模地震・津波災害応急対策対処方針』の決定
平成30年度版防災白書の第1部、第1章、第2節、2-3には、
『大規模地震・津波災害応急対策対処方針』について記載されています。
大規模地震・津波災害応急対策対処方針とは、平成29年12月21日に
中央防災会議幹事会において決定された大規模地震・津波発生時における政府の応急対策の方針のことです。
防災基本計画を踏まえて、首都直下地震や南海トラフ地震、
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大規模地震・津波が発生した時に
各機関がとるべき行動について詳細にまとめられています。
以前は、東南海・南海地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の
3つの地震ごとにそれぞれの応急対策活動要領が定められていましたが、
東日本大震災や熊本地震の教訓を踏まえて抜本的に見直され、
ここで示されている応対方針に統合されました。
(参照:http://www.bousai.go.jp/jishin/oukyu_taisaku.html)
応対方針の主なポイントは、以下の3点です。
① 行動計画
・災害発生後一カ月間の災害応急対策における行動計画をタイムラインに定めた。
・政府が行う緊急輸送のための交通確保、救助・救急、消火活動等、医療活動、物資の調達、
燃料供給などの活動と防災関係機関の役割を明示した。
② 防災関係機関の役割
・救助・救急・消火活動を行う、警察、消防、自衛隊と、その支援を行う
国土交通省TEC-FORCEの活動を位置づけた。
・物資の調達において、プッシュ型支援を行う物資品目を特定し
関係省庁の役割、広域物資拠点の施設基準を含めた確保方針を明確化した。
・燃料供給において、重点継続供給する施設、重要施設への優先供給の手続きを明確化する
など、防災関係機関の役割を整理した。
③ 海外からの支援
・海外からの支援の受入れについて、資金支援受け入れの有用性の周知と
その受入れ体制を明確化した。
・海外からの物資支援の受入れは、被災地のニーズが生じた場合とし、
その輸送手続きを明確化した。
・海外からの捜索・救助チームについては、被災地のニーズを確認の上、
国連による外部能力評価ヘビー級を取得しているチームを受け入れることとした。
・海外からの医療チームについては、被災地のニーズを確認の上、
WHOによる緊急医療チーム認定を受けているチームを受け入れることを明記した。
ざっと読むだけでは少し難しいかもしれませんが、
こうした細かな取り決めが正式に明文化されたことで
いざという時によりスムーズな対処ができるようになったと言えます。
『南海トラフ地震に関連する情報』を発表する等の政府対応
続いて第1部、第1章、第3節、3-1に記載されている
『南海トラフ地震に関連する情報』を発表する等の政府対応についてご紹介します。
これは、平成29年9月26日中央防災会議幹事会にて決定し、
平成29年11月1日より運用されている政府対応の方針です。
これによると、南海トラフ地震に対する新たな防災対応が定められるまでの当面の間、
南海トラフ沿いで異常な現象が発生した場合(※下図参照)や、
地震発生の可能性が相対的に高まっていると政府が評価した場合に、
まずは、気象庁から「南海トラフ地震に関連する情報」が発表されます。
この情報が発表されると、内閣府が「関係省庁災害警戒会議」を開催し、
被害が想定される地域に対して地震への備えの再確認を促す呼びかけを行います。
同時に関係省庁は、情報収集・連絡体制の確認、所管する施設の点検、
地震発生後の災害応急対策の確認を行うこととなっています。
(参考)南海トラフ沿いで発生する典型的な異常な現象のケース
このように、南海トラフ地震が発生した場合や発生が予見される場合に、
迅速に情報が発信できるよう各機関の役割、連携等が整理されています。
災害発生時にどこの機関から、どのような情報が出されるのかを事前に知っておきましょう。
日頃から地震に対する備えをしておくのは当然ですが、
それと併せて心の準備をしておき、「南海トラフ地震に関連する情報」がいざ発表された時に、
パニックにならないことが大切です。
防災白書から読み取る国の最新災害対策・まとめ
以上、平成30年版防災白書から一部をご紹介しました。
実際には地震に限らず、様々な災害に対する報告や取り組みがまとめられており、全体はなかなかのボリュームがあります。
内閣府のwebサイトから閲覧可能なので、ぜひ一度他の部分にも目を通してみてください。
また、防災白書は毎年6月頃に最新版が公表されます。
来月あたりには最新の情報が得られると思いますので、そちらにも注目してみてください。