こんにちは。
4月18日、台湾東部・花蓮県を震源とするマグニチュード6.1の地震がありました。
震源の深さは18.8キロ。同県の一部で震度7を観測しました。
これまでに落石などで17名の怪我が報告されています。
余震の鎮静化と、一刻も早い被害からの復旧を祈るばかりです。
今回のコラムでは建物の耐震・制震・免震の違いについてご説明します。
台湾や日本などプレートの境界付近に存在する国は、
今回のような大きな地震にいつ見舞われてもおかしくありません。
耐震・制震・免震の違いをしっかりと理解し、自分の家に合った対策を進めましょう。
目次:
耐力壁や接合金物で建物自体を強化する『耐震』
まずは、このコラムでもたびたび出てくる『耐震』について。
耐震とは、壁や柱、接合部を強化することで建物の強度を上げる工法です。
地震の揺れによって建物が倒壊するのを防ぎ、住人が避難できるようにします。
具体的な方法としては、壁の中に筋交いや構造合板を入れて強度の高い耐力壁をつくったり、
柱と梁の接合部を金物で補強します。
耐震工法のメリットは、制震や免震に比べて簡単に取り組めること。
実際に一般家庭で採用されている工法の多くが耐震工法で、
私たちのウッドピタ工法も耐震工法のひとつです。
一方で、耐震工法で注意しておかなくてはいけないのは、
地震の揺れがダイレクトに建物に伝わってしまう点です。
本震の際に倒壊を免れたとしても、繰り返し地震が起これば徐々に損傷が蓄積され、
建物が倒壊してしまう可能性もあります。
そのため、耐震に制震や免震を組み合わせて採用されることが多くなっています。
【耐震のメリット】
・建物が倒壊する可能性が低くなる
・設置の際、地盤による制約がほとんどない。
・新築・改修を問わず簡単な工事で家の強度が上がる(短工期)
・制震工事、免震工事に比べて工事にかかる費用が安い
【耐震のデメリット】
・地震の揺れが直接伝わるので建物内の被害が大きい
・繰り返し起こる地震に弱い
・高層階になるほど揺れが大きくなる
地震の揺れをダンパーによって受け流す『制震』
次にご説明するのは『制震』です。
制震は、建物内部にダンパーと呼ばれる振動低減装置を組み込んで
地震の振動を吸収し、建物が揺れるのを抑える工法です。
オイルダンパー、金属履歴ダンパー、粘弾性ダンパー、摩擦ダンパーなど
振動低減装置には様々な種類がありますが、基本的な仕組みは同じです。
地震の衝撃を受けた建物が水平方向に変形した際に、
ダンパーも一緒に粘り強く変形することで、地震の振動エネルギーを受け流します。
制震工法には、建物の屋上部分に制震部材である錘(おもり)を配置する方法もあります。
建物と一緒に錘も揺れて、揺れを打ち消すという仕組みです。
高層ビルや高層住宅などの高い建物は、上層に行くほど揺れが増すので
制震工法が特に高い効果を発揮します。
また、建物自体の損傷や変形などが軽減されるため、繰り返しの地震にも有効な工法といえます。
耐震と組み合わせることで、建物の強度をより高めることのできる工法です。
【制震のメリット】
・地震の揺れを20%から30%程度軽減できる
・繰り返し起こる地震に強い
・高層階になるほど揺れを抑えられる
・免震工事に比べて工事にかかる費用が安い
【制震のデメリット】
・免震工法に比べて建物に揺れが伝わる
・耐震工事に比べて工事が大掛かりになる
・耐震工事に比べて工事にかかる費用が高い
建物と地盤を絶縁し地震の揺れを伝えない『免震』
最後は『免震』です。
免震は、建物と基礎の間に免震装置を設置して建物を地盤から絶縁することで、
地震の揺れを受け流して建物に伝えないようにする工法です。
地震が起きたとき、基礎の上で動ける状態になっている建物が、
地盤の揺れに伴って反作用で移動するため、
建物自体の揺れや変形、損傷、建物内の被害が大きく減少します。
免震装置は、建物を支えると同時に建物の固有周期を延ばす役割の『アイソレータ』と、
振動を抑える『ダンパー』によって構成されており、
中には地震の揺れを80%以上軽減できるものもあります。
ただし、縦揺れの地震には横揺れの地震に対するほどの効果は発揮できません。
また、ハウスメーカーによって違いはありますが、小規模から中規模の地震の場合、
免震装置が作動しないこともあります。
さらに、地震によって基礎から上の建物部分が移動するので、
それに対応できる設備配管の仕様にする必要があるのもデメリットと言えます。
免震工法も、建物の耐震化と組み合わせることでより強度の高い構造となります。
【免震のメリット】
・地震の揺れを50%から80%軽減できる
・建物内の被害が少ない
【免震のデメリット】
・縦揺れの地震に弱い
・免震工法用の設備配管にしなくてはならない
・装置の定期的なメンテナンス、交換などにコストがかかる
・軟弱な地盤などでは免震装置の設置が難しい
・耐震工事、制震工事に比べて工事が大掛かりになる
・耐震工事、制震工事に比べて工事にかかる費用が高い
仕組みから理解する耐震・制震・免震の違い・まとめ
以上が耐震工法、制震工法、免震工法の違いでした。
ちなみに費用の安さや施工の手軽さでは耐震工法が最も優れており、
それに続いて制震、免震という順でコストが高くなっていきます。
見ての通り、耐震、制震、免震それぞれにメリット・デメリットがありますが、
まずは手軽なところから住宅の耐震化に取り組んでみてはいかがでしょうか。
耐震診断を行えば、どこをどう補強するといいのかも明確に見えてきます。
いちばんよくないのは、何もしないことです。
迫りくる巨大地震に備えて、まずは住まいの防災から始めていきましょう。