ウッドピタの地震防災コラム

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耐震補強2015年8月7日

賃貸アパートの耐震補強ウラ事情。大家さん必読です!

オーナーイメージ

こんにちは。暑い日が続きますね!

世界有数の地震国・日本では、毎日と言ってよいほど、どこかで地震が起きています。
今年は噴火活動も活発で、今『世界でいちばん危険な火山地帯』とも…。
「もしもウチの近くで大地震や噴火が起きたら、我が家はどうなるの!?」
そんなことを、誰もが一度は考えたことがあるでしょう。
あなたのお宅が一戸建てなら、耐震診断を受けてみてください。
分譲マンションなら、購入時に耐震性能の説明があったかと思います。
でも、ご自宅が賃貸住宅なら?借家が倒壊した時の補償はどうなるの!?
賃貸の地震のケアは、一生住む場所でないという認識からか意外と曖昧です。
というわけで、今回はアパートの耐震補強について書いてみたいと思います。
アパート入居者の方はもちろん、物件のオーナーさんも必読ですよ!

目次:

↓ 知らなきゃ危ない!賃貸アパートの耐震基準

↓ もしもアパートが倒壊したら…大家さんの責任は?

↓ 賃貸アパートが耐震補強に踏み出せない本当の理由

↓ 耐震性UPで物件の入居率もUPする!

↓ アパートの耐震補強ウラ事情・まとめ

知らなきゃ危ない!アパートの耐震基準

あなたがお住まいの賃貸アパートは、震度いくつまでの地震に耐えられるかご存知ですか?
きっと、ほとんどの方が答えられないと思います。
もしもそのアパートが1981年6月1日以降に建てられたものなら、名目上は「震度6強に達する程度の地震で倒壊・崩壊しない」ことになっています。
それは、当時改正された新耐震基準を満たしている(はず!)だから。
心配なのは、耐震基準の見直しが行われる以前、つまり1981年5月31日以前のアパートです。
なおかつ今まで一度も耐震補強をしていないとなれば…早急に耐震診断を受けることをおすすめします。
でも、過去に耐震補強をしたかどうかなんて、入居者の方はなかなかわかりませんよね!?
少しでも不安に思われるなら、やっぱり大家さんに聞いてみた方がいいでしょう。

もしもアパートが倒壊したら…大家さんの責任は?

20年前に発生した未曽有の都市直下型地震・阪神・淡路大震災について、このコラムでも以前紹介したことがあります。
その阪神・淡路大震災において賃貸マンションが被災・倒壊し、1階に居住していた入居者4名が死亡、遺族がオーナーと仲介業者に3億334万円の連帯支払いを求めた事案が発生しました。(神戸地裁平成11年9月20日判決)
オーナーの主張としては「建築基準法は本件建物が建築された後の昭和56年に改正されたが既存の建物については既存不適格建物として、適法な建物として存続することが認められている。したがって、本件建物の設置保存について瑕疵があったとは言えない。」というもの。
一方原告側の遺族らの主張は「建築時である昭和39年の建築基準法令の定める技術的基準に適合せず・・・その設置に瑕疵があったことは明らかである。」というもの。
これらの主張に対し裁判所は「建物は、安全性を有していなかったものと推測することができる。したがって建物には瑕疵があったというべきである」、「地震の損害発生への寄与度は、認定判断にかかる建物の設置の瑕疵の内容・程度および本件地震の規模・被害状況等からすると、5割と認めるのが相当である。」と判断し、民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)により、オーナーは遺族に請求額の5割を支払うことになりました。(仲介業者に対する請求は棄却されました)
この他にも、借家物件が通常の安全性を有していなかったとして、オーナーが遺族に損害賠償を支払った事例がいくつかあります。
賃貸オーナーには、入居者の安全を確保するという責任が大前提としてあり、入居者に落ち度がない場合は所有者に責任を問われる可能性が非常に高いと言えるでしょう。

さらに、阪神淡路大震災で犠牲となった方たちのその年代構成を見ると、 下記の通り、ピークの一つが20〜24歳に見られます。これは、神戸には大学がたくさんあり、下宿やアパート住まいの学生が多かったこと、彼らの住まいの耐震強度が足りなかったことが要因の一つと推測されます。

図1 性、年齢別(5 歳階級)死亡数(出典:兵庫県医師会)
性、年齢別(5 歳階級)死亡数

入居者もそのご家族も安心して生活できるよう、そしていざという時のためにアパートの耐震化をすることがいかに重要か考えさせられます。

賃貸アパートが耐震補強に踏み出せない本当の理由

ここで共同住宅全般の耐震化がどれほど進んでいるのか見てみましょう。
以下は東京都の平成22年度末における耐震化率の推計値です。

【表1】 住宅の耐震化の現状

住宅 昭和56年以前
の住宅
昭和57年以降
の住宅
住宅数 耐震性を満たす
住宅数※1
耐震化率
(平成22年度末)
種別 構造
戸建
住宅
木造 555,500 1,101,300 1,656,800 1,136,900 68.60%
非木造 46,300 152,600 198,900 180,900 91.00%
  601,800 1,253,900 1,855,700 1,317,800 71.00%
共同
住宅
木造 197,600 449,900 647,500 454,800 70.20%
非木造 1,004,700 2,632,000 3,636,700 3,210,300 88.30%
  1,202,300 3,081,900 4,284,200 3,665,100 85.50%
合計 1,804,100 4,335,800 6,139,900 4,982,900 81.20%

※1 平成20年住宅・土地統計調査を基にした推計値
※2 共同住宅には、特定建築物である賃貸共同住宅を含む。

この表を見てわかるのは、木造共同住宅の耐震化率が70.2%と非常に低いということ。
非木造が88.3%で、9割近く耐震化が進んでいるのに対し、木造はまだ3割の住宅が耐震化に取り組んでいないようです。
ではなぜ耐震化が進まないのでしょうか。
その理由のひとつは、やっぱり予算です。
賃貸住宅は個人のお宅と違い、あくまでも「経営」ですから、コストバランスを考えて耐震補強に踏み出せないという声が多々あります。
しかも、築年数の古い木造の共同住宅を耐震補強するとなると、相当なコストがかかります。
そしてもっとも大きな理由が、入居者がいる状態での耐震補強工事は、一般的には非常に難しいということ。
耐震補強工事を行うために、入居者のみなさんに仮住まいを用意して…なんてことをしていたら、それこそ赤字経営になってしまいますからね。。。
このような理由で、耐震補強をしたいと思っていても、諦めてしまっている大家さんが大勢いらっしゃると思います。
だからといって地震対策を怠っていると、先ほどの支払い事案のように、さらに大きなリスクを被ることも。。。
大家さんのいちばんの悩みどころですね。
(ちなみにウッドピタなら外部からの施工がほとんどなので、入所中の方がいらっしゃっても施工可能です。耐震補強工事にも様々な種類・工法がありますので、気軽にご相談ください!)

耐震性UPで物件の入居率もUPする!

賃貸アパートの耐震補強について、もう少し「大家さんの目線」で考えてみましょう。
賃貸住宅を探している人の要望は、「家賃」「交通」「間取り」「部屋数」「日当たり」「環境」といった基本的な項目が昔から上位にあがっています。
それに続く項目として「遮音・断熱性」「付帯設備の内容」「セキュリティ」などがありますが、4年前の東日本大震災後、にわかにクローズアップされるようになったのが「耐震性」です。
築年数が古くても、耐震診断をしっかり受けていることや、耐震補強工事を完了していること、高い評点を得ていることなどがセールスポイントとなり、入居希望者にアピールすることができます。
今後は「耐震診断書を見せてもらえますか?」なんて言ってこられる入居希望者が増えてくるかも。。。
だとすると、アパートの地震対策を「経営上の戦略」として考えて耐震補強を行うことも、ひとつの手かもしれません!

賃貸アパートの耐震補強ウラ事情・まとめ

地震に強いかどうか。この建物は、震度いくつまで耐えられるのか―。
一般の戸建住宅や分譲マンションと同じように、賃貸アパートにおいても耐震性が非常に重要であるということがわかっていただけたかと思います。
「でも、何から始めていいのかわからなくて…」といった大家さんがまだまだ多いのも事実です。
そんなときは、まずはやっぱり耐震診断(これ基本!)。
あなたが所有するアパートの現状を知っておくことがいちばん大切です。
そして心配なのはやはりご予算でしょう。
これについても過去のコラムで書きましたが、自治体によって補助金や助成金が貰えるケースがあります。
例えば名古屋市だったら、共同住宅の場合、「耐震改修費の1/2かつ最大(90×戸数)万円」の助成」が受けられます!(平成27年8月現在)
私たちウッドピタは、こうした耐震補強の情報の発信を続けながら、皆様の安心の生活に寄与できたらと思っています。
地震のこと、耐震のこと、工事のこと、なんなりとご相談くださいませ!





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<参考資料>
●東京都耐震改修促進計画2014
<参考サイト>
●名古屋市ホームページ「木造住宅耐震改修助成」
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/15-14-9-4-0-0-0-0-0-0.html
●一般社団法人 兵庫県医師会ホームページ「性、年齢別(5 歳階級)死亡数」
http://www.hyogo.med.or.jp/?page_id=68