こんにちは。
阪神・淡路大震災から20年。東日本大震災から4年。
この地震コラムでも、二つの巨大地震がもたらした深刻な被災状況を振り返ってきました。被災地に残された大きな爪痕を写真やデータで目の当たりにするたびに、私たちウッドピタも、耐震補強の必要性をもっと世に訴えていかねばならないという責任をひしひしと感じます。
ところで、みなさんが耐震補強をためらってしまう要因は何でしょうか?建替えや住み替えも検討されたりと要因は様々あるかと思いますが、「コスト」もその一つではないですか?耐震補強の必要性を十分に理解しているのもかかわらず、「工事に費用がかかる」という現実が障壁となり、どうしても二の足を踏んでしまうケースが数多くみられます。
そんな時に活用したいのが、各自治体が行っている耐震補強・耐震改修の助成制度です。
4月に入り、各自治体で新年度の補助金受付が順次スタートしています。
「補助金を利用するには?」「耐震補強のレベルは?」「いつ、いくら貰えるの?」
というわけで今回は、わからないことだらけの耐震補強の補助金のしくみについて詳しく見ていきます!
目次:
↓ ご注意!申請には自治体による補強計画の事前審査が必要です!
まずはチェック!「補助金対象家屋」となる3つの条件
耐震補強工事で補助金を活用するには、様々な条件をクリアしなければなりません。
詳細は各自治体によって異なりますが、このコラムでは多くの自治体で一般的となっている条件をご説明します。まずは補助金の対象となる家屋の条件です。
【一般的に補助金の対象となる家屋の条件】
条件① 建築年(昭和56年5月までに建築確認を受けた木造住宅)
条件② 建物の構造(木造軸組工法、2階建て以下)
条件③ 建物用途等(戸建住宅、長屋・共同住宅等であること、空き家でないこと等)
その他、建築基準法に適合した建物であるか、住民税を滞納していないか、など条件はありますが、建物に関する条件としては上記の3つをまず確認しましょう。
まずは条件①建築年について。
多くの自治体で「昭和56年5月31日までに建築確認を受けた木造住宅」が条件となります。なぜ、昭和56年5月31日なのかと言うと、以前にこのコラムでも書いた通り、昭和56年5月31日以前の建物は「旧耐震基準」で建てられています。単に古い住宅というだけで助成を行うのではなく、「新耐震基準」に満たない住宅については積極的に助成を行いますよ、というものです。
続いて条件②建物構造について。
基本的には木造軸組み工法で2階建以下の建物が、補助金対象となります。自治体によって、伝統工法やツーバイフォー住宅が対象であることもありますので注意が必要です。また、3階建て以上の住宅は、耐震工事や構造計算が特殊になるため、補助金の対象外となるケースがほとんどです。
そして最後は条件③「建物用途等」について。
所有者が自ら居住している戸建住宅である場合は何も問題ありません。貸家のように、所有者と居住者が別の方(配偶者や親族なども含む)の場合は、申請は所有者が行うことが条件となります。また、店舗等併用住宅は制限がある場合が多いので確認が必要です。
自治体によって条件は異なりますので、上記に当てはまらない場合でも、まずはお問い合わせをしてみましょう。
補助金交付の要件は「耐震補強後の評点が1.0以上」
補助金の対象となる家屋の条件は以上ですが、ほかにも補助金の交付要件が2つあります。
一つは、お住まいの市町村が実施している耐震診断あるいは自治体が指定する耐震診断を受けていること。耐震診断にかかる費用は自治体によって様々で、全額負担してくれる市町村もあれば、補助費用の上限額が決められているケースもあるので要確認です。
もう一つは、耐震診断によって出された耐震性能を表す数値「評点」を、自治体の定めるレベル(評点)まで補強すること。
この評点についても、本コラムで書いたことがあります。評点が1.5以上は「倒壊しない」。1.0~1.5未満は「一応倒壊しない」。0.7~1.0未満は「倒壊する可能性がある」。0.7未満は「倒壊する可能性が高い」となっています。自治体の実施する耐震診断の結果、評点1.0「一応倒壊しない」というレベルを満たしていない場合、「一応倒壊しない」レベルになるように補強工事を実施することが補助金を交付する要件となります。耐震補強の助成制度は、あくまでも地震による倒壊を防ぎ、人命を救助することが目的。よって本来は、より評点が高い補強工事をしてもらいたいというのが行政の考え方だと思います。
しかしながら、そこで問題となってくるのがやはり「費用」です。
評点を高くするほど、補強箇所が増え、コストも高くなるのが必然です。「耐震補強はすぐにしたい。でも、費用がこんなに高いと、補助金が利用できたとしてもとても払えない…」という嘆きの声が聞こえてきます。こうした声に応えるために、一部の自治体で、評点0.7レベルの補強でも補助金の交付を行っている場合があります。
市町村によって「評点0.7」でも補助金が貰える!?
【前述したとおり、大地震に対する恐怖を感じていながらも、耐震補強に踏み出す人がまだまだ少ない理由の一つが「費用」です。
特に評点1.0まで補強しようと思うと、費用がかさみ、取り掛かれない…というのが現状です。
この状況を踏まえ、まずは少しでも耐震性を上げることが重要だという考えのもと、評点0.7以上の補強でも助成を行ってくれる自治体が増えてきました。「段階的改修」や「簡易補強」などと呼ばれますが、初回の補強でまずは、評点0.7以上となる耐震補強工事に補助金を利用することができるのです。
具体的な例で補助金交付条件を見てみよう!
では、以上のことをふまえ、具体例をいくつかご紹介します。
まずは、ウッドピタ事業本部がある名古屋市の場合です
〈名古屋市の場合/平成27年度〉
【対象建物】
①建築年:昭和56年5月31日以前に着工した木造住宅
②建物構造:2階建て以下の木造軸組工法・伝統工法
③用途等:名古屋市内にある戸建住宅、長屋・共同住宅、
人が居住していること(空き家でないこと)
※申請者は所有者です。※貸屋の場合は借家人全員の同意が必要
【耐震改修補助金交付要件】
名古屋市では、市の耐震診断(無料)の結果、評点1.0未満を1.0以上(かつ0.3以上加算)にする「一般改修」と、評点0.7未満を1回目の工事で0.7以上1.0未満に上げ、次回の工事で1.0以上に引き上げる「段階的改修」でそれぞれ補助金を交付しています。どちらの補助金額も耐震改修費の2分の1かつ最大で補助される金額です。
「段階的改修」の場合、初回の補助金額の上限は40万円となり、残りの50万円分を次回に1.0まであげる補強工事を実施する際に補助されます。
長屋・共同住宅の場合、平成25年度から(上限額×戸数)万円補助されるようになり、補強に取り組みやすくなっています。
なお、非課税世帯ではさらに補助金の上乗せもあります。
(非課税世帯の補助金額 一般改修の場合 最大:135万円)
次に、東日本エリアで平成27年度の申し込みが既に開始されている世田谷区の場合です。
〈世田谷区の場合/平成27年度〉
【対象建物】
①建築年:昭和56年5月31日以前に着工した木造住宅
②建物構造:2階建て以下の木造軸組工法または枠組壁構法の建築物
③用途等:世田谷内にあり、人が居住している戸建住宅、共同住宅・長屋
一戸建て住宅または1/2以上が住宅として使用されている併用住宅
※申請者は所有者 ※貸屋の場合は借家人全員の同意が必要
【耐震改修補助金交付要件】
耐震診断の結果、建物全体の上部構造評点1.0未満と判定された建物に対して、
世田谷区では「①耐震改修設計」と評点1.0未満の建物に関して建物全体の評点を1.0以上にする「②耐震改修工事」と、1階の評点を1.0以上にする「③簡易改修工事」にそれぞれ補助金を交付しています。
さらに、世田谷区では平成27年度までに耐震化率95%を目指し、②耐震改修工事に30万9千円の助成額の上乗せが予定されています。
このように、補助金の交付金額や条件は自治体によって大きく異なってきます。
さらに申請の受付期間や交付対象戸数なども自治体によって違いがあるので、詳細は、皆さんがお住まいの自治体窓口または、弊社にお問い合わせください。
ご注意!
申請には自治体による補強計画の事前審査が必要です!
ここまで補助金を貰うための条件について書いてきましたが、もう一点気を付けていただきたいことがあります。それは補助金の申請には補強計画の事前審査が必要であるということです。
補助金申請手続きの際には、工事着工前に自治体による補強計画の事前審査が必要になります。補強計画を作成するためには、耐震診断、建物調査、見積もりと意外と時間がかかります。
この4月に申請が始まったばかりだから・・・と思っていると、間に合わなくなるケースがありますので、ご注意ください!
そして工事が始まったあとも自治体の中間検査や完了検査があったり、完了報告書を提出しなければならなかったりと、補助金交付までの手続きは、煩雑で時間もかかりかなり面倒と言わざるを得ません。「これではやっぱり無理だよ!」という方。ぜひ一度ウッドピタへご相談くださいね。手続きのお手伝いはもちろん、補助金活用に関する様々なアドバイスをさせていただきます。お住まいの地町村の最新の助成制度についてもお調べしますので、お気軽に声をお掛けください!
助成制度を使って耐震補強!まとめ
おさらいです。耐震補強のいちばんの目的は何でしょう?
「建物を守ること」はもちろんですが、それよりもまず「命を守ること」が、やはりいちばんではないかと私は思います。
たとえ評点が1.0未満の耐震補強であっても、工事を行うことで建物の倒壊レベルを以前より抑えることができ、死亡のリスクを確実に減らすことができます。
だからこそ、各市町村の助成制度を使って、賢く、上手に、耐震補強工事を行っていただくことをおすすめします。
というわけでこれからも、地震のこと、耐震のこと、工事のこと、もっともっとみんなで考えていきましょう!
〈参考資料〉
耐震補強セミナー「我が家の耐震補強と補助金の活用法」((株)ウッドピタ/耐震アドバイザー)
〈参考サイト〉
名古屋市ホームページ「木造住宅耐震改修助成」(http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/15-14-9-4-0-0-0-0-0-0.html)