ウッドピタの地震防災コラム

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地震2015年3月11日

3.11 東日本大震災の住家被害をもう一度考える。

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こんにちは。

平成23年3月11日午後2時46分。
未曽有の大地震、東日本大震災が起きました。

ウッドピタ事業部のある名古屋市にいても大きな横揺れを感じ、
当初は「ついに東海大地震が来たか!」と身構えたほどでした。

あれからもう4年。いや、まだ4年…。
亡くなられた方々を悼み、被災された地域の復興をただただ祈るばかりです。

目次:

↓ 被害を大きくした津波~原発事故。

↓ 役立った阪神・淡路大震災の教訓。

↓ 住家の倒壊に影響した地域差とキラーパルスの有無。

↓ 耐震補強はまず生命を守るため!

↓ 3.11 東日本大震災の住家被害をもう一度考える・まとめ

被害を大きくした津波~原発事故。

東日本大震災の震源地は東北地方の三陸沖で、マグニチュード9.0
宮城県栗原市が震度7、宮城県、福島県、茨城県、栃木県の4県37市町村が震度6強という、非常に大規模な地震でした。その後も震度4以上の余震が絶え間なく続き、特に1か月後の4月7日と11日に発生した地震が追い打ちをかけるように被害を拡大させました。

死者19,074人、行方不明者2,633人、負傷者数6,219人(平成26年9月1日現在)。

住家被害は、全壊約13万棟、半壊約27万棟、一部破損約74万棟に及びました。岩手、宮城、福島3県の42市町村では、今も仮設住宅に約6万9000世帯が暮らしています。
もっとも大きなダメージは、日本中を震撼させた津波被害です。死因の90.6%が溺死、全壊した建物の約90%が津波によるという調査結果が出ています。
津波だけではありません。広範囲で起きた火災による被害、さらに福島第一原子力発電所の被災によって、東日本大震災は自然の脅威の前に現代社会の脆さを露呈してしまいました。

そんな中で、私たちウッドピタ事業部が気にかけたのは、やはり住家の被害状況です。
木造住宅で甚大な被害を受けたのは、建てられてから年数の経っている家が多く、それは20年前の阪神・淡路大震災の場合と同じです。ただ、その数は圧倒的に少なくなっています。津波に押し流されてしまった建物も、流される前の映像を見ると、外見的には大破していないものが多いように見受けられました。

理由には次のことが考えられます。

役立った阪神・淡路大震災の教訓。

大地震の犠牲になった方々の死因を見ると、阪神・淡路大震災では圧死・損壊死等が死因全体の83.3%を占めています。その多くが建物等の倒壊が原因と言われています。東日本大震災は圧死・損壊死等は4.2%でした。地震の性質も被害面積も異なり、津波の発生の有無もあるので一概に比べられませんが、建物等の倒壊の割合が減少していることは確かでしょう。

img_ 2015-03-11 21.27.59※総務省消防庁「東日本大震災記録集」参照

阪神・淡路大震災の住家被害は昭和56年以前の旧耐震基準の家に集中していました。東日本大震災でも被害は古い家に多く、このことから、新耐震基準はそれなりに効果を発揮していると考えられます。

さらに当コラムの前々回( 耐震診断を今すぐ受けたい!危険な平成12年以前の木造住宅。)でもご紹介したように、阪神・淡路大震災以降、平成12年に新耐震基準の見直しが行われ、より強い家へと設計段階からレベルアップが図られています。阪神・淡路大震災の教訓が、16年後、東日本大震災における住宅の倒壊被害を抑えるのに少しでも役立ったのではないかというのが、防災面での解釈となっています。

住家の倒壊に影響した地域差とキラーパルスの有無。

【 雪国ならではの住宅仕様 】
東北地方は冬の積雪が2~3mに達する所もあります。必然的に、屋根に積もった雪の重みで家が倒れない構造の住宅が求められます。たとえば、重量のある屋根瓦をあまり使用せず、屋根を軽くして家の構造にかかる負担を少なくしたり、太い柱を使用するなどして頑丈な造りにしたり。住宅の基礎の部分も、冬場に地面が凍結すると膨張して地盤を押し上げるため、凍結深度(土が凍る位置)より深く掘り下げると聞きました。そうした豪雪地域ならではの雪に強い仕様が、大地震にも強かったのではないかという意見が出ています。

【 阪神・淡路大震災とは異なる地震動の周期 】
もちろん、住宅仕様の違いだけで倒壊数が減少したわけではありません。
東日本大震災の場合、「キラーパルス」が少なかったことが、住家倒壊の少なさに影響していたのではないかと考えられています。
地震動(地震の揺れ)には、様々な周期の波が含まれています。ガタガタッと揺れる2秒以下の短い周期の波を短周期地震動、ゆっくり大きな振幅でゆれる長い周期の波を長周期地震動と呼びます。キラーパルスというのは、地震動の周期が1~2秒の「やや短周期地震動」です。

建物はそれぞれに固有の“揺れやすい周期”を持っていて、地震の波がそれに近い周期だと、「共振」して大きく揺れることになります。短い周期の中で、1~2秒のものが木造住宅に大きな被害を及ぼしやすいため、「キラーパルス」という物騒な名前で呼ばれたりしているのです。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震ではこのキラーパルスが飛び抜けて多かったのですが、東日本大震災における短周期地震動はおもに1秒以下の周期の揺れだったことがわかっていて、住家倒壊が比較的少なかった要因だと思われます。

補足ですが、一方の長周期地震動が影響するのは高層ビルや長大橋などです。それらの建物は長周期地震動と共振しやすい性質を持っています。また、この地震動は遠方までその力は減衰せずに影響することが知られています。東日本大震災で、震源地から離れた東京、さらには大阪でも、震度自体は小さいにもかかわらず高層ビルが大きく揺れたのはこの影響を受けたからなんです。

残念ながら、地震動は地震が発生するまで分かりません。でも、発生してからでは遅いですよね。これからの防災科学の進歩を期待したいです!

耐震補強はまず生命を守るため!

しかし、本当に「住家の倒壊は少なかった」と言ってしまってよいのでしょうか。

全壊した建物約13万棟のうち約90%が津波によるものですが、それは統計上の割合にすぎません。よく考えてみてください。津波被害以外でも1万棟以上もの建物が全壊しているのです。当事者にとっては「家が壊れてしまった」「壊れた家の下敷きになって家族が死傷した」ということだけが事実です。

だからこそ、今、耐震補強の必要性が強く叫ばれているのです。津波や放射能汚染とは違い、耐震補強を実行して揺れの被害をできるだけ小さくすることは、私たちにも対処できる防災の一つです。

「でも予算が…」と悩む方もいらっしゃるでしょう。その場合は、何回かに分けた補強工事計画を立て、少しずつ耐震化を進めていく方法もあります。一度の補強工事で高レベルの耐震化を実現できるのは理想ですが、「今できること」を実行していくのも大切なことです。地震はいつ起きるかわからないのですから。耐震診断の評点は1.0以上が耐震基準の合格ラインですが、少しでも耐震性を上げることが重要という考えから、0.7以上の補強で補助金が出る自治体も増えています。
震度5強で人は物につかまらないと歩くのが難しく、震度6以上になるともう立っていられません。動くことができず、逃げるに逃げられない状態になります。それほどの大地震が起きた時、耐震補強がしてあれば、倒れないとは言いきれないものの、家の倒壊による死亡のリスクを少しでも減らせます。

まずは生命を守ること!───それが本当に大切なことなんだと、東日本大震災関連のニュースを見るにつけ、改めて痛感しました。

動画_お客様の声

当社で耐震補強されたお客様で、実際に東日本大震災を体験された方の生の声をご紹介します。
よろしければ参考にしてください。

東日本大震災を体験されたお客様の声

※掲載したのは「お客様の声」の一部です。
詳しくは、株式会社ピタコラム ウッドピタサイト「お客様の声」をご覧ください。

3.11 東日本大震災の住家被害をもう一度考える・まとめ

犠牲者の死因や住家倒壊の原因を分析し、どうすれば被害をもっと少なくできるのか。私たちは経験から多くの教訓を学び、次の大地震が来る前にしなければいけないことを発見していきます。

大地震の脅威は誰にとっても他人ごとではありません。懸念される南海トラフ大地震での全壊建物数の想定は、愛知県38万8000棟、大阪府33万7000棟、静岡県31万9000棟、三重県・高知県23万9000棟…と続きます。

わが家の耐震性能をどのレベルに設定するのか」を決めるのは、そこに住むあなたとご家族です。ウッドピタ事業部も、被災者をつくらない耐震補強をめざして技術の研鑽を積み、被害想定の数字を減らしていきたいと願っています。



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参考資料
総務省消防庁 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第150報)
総務省消防庁 東日本大震災記録集
河北新報社 特集/東日本大震災から4年〈被災地のいま〉
朝日新聞DIGITAL 南海トラフ地震の被害想定