気が付けば、もう10月~。
すっかり肌寒くなった今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
みなさんは9月1日の「防災の日」に、ちゃんと防災訓練しましたか?
私は自宅の防災グッズを再点検して、古くなったミネラルウォーターを買い替えました。
みなさんも防災の準備をお忘れなく!というわけで、前回のコラムでは「防災の日」にちなみ、9月1日に発生した関東大震災について詳しく書きました。
その関東大震災の再来…と言われている地震があるのをみなさんはご存知でしょうか。
もしも起きてしまったら、とてつもなく甚大な被害が想定されている地震。
それが「首都直下地震」です。
内閣府はすでに、あの「南海トラフ巨大地震」と並ぶ大地震として専門機関をつくり、対策を進めています。
ではその首都直下地震、一体どんな被害が想定されているのか詳しく見ていきましょう。
目次:
首都直下地震が今後30年のうちに発生する確率は70%!
平成24年3月7日の中央防災会議「防災対策推進検討会議」において、「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」の設置が決定されました。
そのワーキンググループで防災対策の対象となった地震は、以下の2つです。
A) 首都直下のM7クラスの地震「例:都心南部直下地震」
B) 相模トラフ沿いのM8クラスの地震「例:関東大震災タイプの地震」
このうちA) 首都直下のM7クラスの地震のひとつである都心南部直下地震は「30年間に70%の確率で発生する」と言われており、防災対策の主眼はこちらに置かれています。
都心南部直下地震は東京都大田区付近が震源地とされており、以下のように震度分布が予測されています。
震度分布(都心南部直下地震)
ちなみに、ワーキンググループで検討される「首都直下のM7クラスの地震」は、都心南部直下地震だけではありません。
対象となっている地震は全部でなんと19地震! 以下の表と断層マップをご覧ください。
首都直下モデル検討会において検討対象としたM7クラスの地震
M7クラスの地震 | 想定場所 | 地震のタイプ |
---|---|---|
地震の発生場所が想定が難しく、都区部及び首都地域の中核都市等の直下に想定する地震 | 都心南部直下 | フィリピン海プレート内の地震(Mw7.3) |
都心東部直下 | ||
都心西部直下 | ||
千葉市直下 | ||
市原市直下 | ||
立川市直下 | ||
川崎市直下 | ||
東京湾直下 | ||
羽田空港直下 | ||
成田空港直下 | ||
さいたま市直下 | 地殻内の浅い地震(Mw6.8) | |
横浜市直下 | ||
地震の発生場所が想定される地震 | 茨城県南部 | プレート境界の地震(Mw7.3)※1 |
茨城・埼玉県境 | ||
関東平野北西縁断層帯 | 活断層(Mw6.9) | |
立川断層帯 | 活断層(Mw7.1) | |
三浦半島断層群主部 | 活断層(Mw7.0) | |
伊勢原断層帯 | 活断層(Mw6.8) | |
西相模灘 | 地殻内の浅い地震(横ずれ断層型Mw7.3) |
※1:この表において「プレート境界の地震」は、北米プレートとフィリピン海プレートの境界の地震をいう
首都直下モデル検討会において検討対象としたM7クラスの地震の断層位置
このようにA)首都直下のM7クラスの地震はひとつではなく、1都4県にわたる様々な震源地を想定対象としています。
また、B)相模トラフで発生する「関東大震災」タイプの大きな地震については、東日本大震災の教訓を踏まえ、2013年より新たに防災対策すべき首都直下地震として検討されることになりました。
ワーキンググループは今後も、最大クラスの地震が起こりうるあらゆる可能性を考慮し、最新の科学的知見に基づいて検討を行っていく方針です。
首都直下で発生する地震のタイプは6つもある!?
このコラムで何度も書いたとおり、日本、しかも首都周辺には全部で4つのプレートが入り組んでいます。
首都及びその周辺地域の足元は、南からフィリピン海プレートが北米プレートの下に沈み込み、これらのプレートの下に東から太平洋プレートが沈み込むという、なんとも複雑な構造をなしています。
関東周辺のプレート境界
こうしたことからも、関東地域で発生する地震の種類は極めて多様で、発生する地震のタイプはおおむね以下の6つのタイプに分類されます。
- 地殻内(北米プレートまたはフィリピン海プレート)の浅い地震
- フィリピン海プレートと北米プレートの境界の地震
- フィリピン海プレート内の地震
- フィリピン海プレートと太平洋プレートの境界の地震
- 太平洋プレート内の地震
- フィリピン海プレート及び北米プレートと太平洋プレートの境界の地震
南関東地域で発生する6つの地震の発生場所
6タイプそれぞれに特徴があり、想定される被害の状況も異なります。
都心部周辺の直下で発生するM7クラスの地震としては、フィリピン海プレート内で発生する地震(③)が検討対象とされており、前述したとおり19の地震に分類して対策が行われています。
ちなみに関東大震災が相当したのは②のタイプで、200~400年間隔で発生しています。
相模トラフ沿いのこのタイプの地震は当面発生する可能性は低いと言われていますが、東日本大震災の教訓に習い、長期的視野に立った対策を実施していくことになっています。
巨大過密都市を襲う!首都直下地震の甚大な被害予測。
地震の種類もさることながら、私たちがもっとも気になるのは「首都直下地震が起きたらどんな被害を受けるの?」ということ。
以下は、被災量がもっとも大きくなると言われている都心南部直下地震の被害想定についてシミュレーションしたものです。
都心南部直下地震における建物等の被害(最悪のケース)
項目 | 冬・深夜 | 夏・昼 | 冬・夕 | |
---|---|---|---|---|
揺れによる全壊 | 約175,000 棟 | |||
液状化による全壊 | 約22,000 棟 | |||
急傾斜地崩壊による全壊 | 約1,100 棟 | |||
地震火災による焼失 | 風速3m/s | 約49,000 棟 | 約38,000 棟 | 約268,000 棟 |
風速8m/s | 約90,000 棟 | 約75,000 棟 | 約412,000 棟 | |
全壊及び焼失棟数合計 | 風速3m/s | 約247,000 棟 | 約236,000 棟 | 約465,000 棟 |
風速8m/s | 約287,000 棟 | 約272,000 棟 | 約610,000 棟 | |
ブロック塀等転倒数 | 約80,000 件 | |||
自動販売機転倒数 | 約15,000 件 | |||
屋外落下物が発生する建物数 | 約22,000 棟 |
全壊の定義:(以降、同じ)
住家がその居住のための基本的機能を喪失したもの、すなわち、住家全部が倒壊、流失、埋没、焼失したもの、または住家の損壊が甚だしく、補修により元通りに再使用することが困難なもの。なお、建物の構造的な倒壊・崩壊はこの全壊に含まれる。なお、液状化の場合、外観目視判定により一見して住家全部あるいは一部の階が倒壊している等の場合、あるいは傾斜が1/20 以上の場合、あるいは住家の床上1mまで地盤面下に潜り込んでいる場合が全壊に相当する。液状化による建物全壊等によって人的被害は発生した事例は少ない。
揺れによる想定全壊棟数は、なんと175,000棟!
あの阪神・淡路大震災の全壊棟数でさえ約104,004棟だったことからも、首都直下地震の規模がどれほどのものかがわかると思います。
そして以下は想定される人的被害です。
都心南部直下地震における人的被害(最悪のケース)
項目 | 冬・深夜 | 夏・昼 | 冬・夕 | |
---|---|---|---|---|
建物倒壊等による死者 (うち屋内収容物移動・転倒、屋内落下物) |
約11,000人 (約1,100人) |
約4,400人 (約500人) |
約6,400人 (約600人) |
|
急傾斜地崩壊による死者 | 約100人 | 約30人 | 約60人 | |
地震火災による死者 | 風速3m/s | 約2,100人 ~約3,800人 |
約500人 ~約900人 |
約5,700人 ~約10,000人 |
風速8m/s | 約3,800人 ~約7,000人 |
約900人 ~約1,700人 |
約8,900人 ~約16,000人 |
|
ブロック塀・自動販売機の転倒、 屋外落下物による死者 |
約10人 | 約200人 | 約500人 | |
死者数合計 | 風速3m/s | 約13,000人 ~約15,000人 |
約5,000人 ~約5,400人 |
約13,000人 ~約17,000人 |
風速8m/s | 約15,000人 ~約18,000人 |
約5,500人 ~約6,200人 |
約16,000人 ~約23,000人 |
|
負傷者数 | 約109,000人 ~約113,000人 |
約87,000人 ~約90,000人 |
約112,000人 ~約123,000人 |
|
揺れによる建物被害に伴う要救助者 (自力脱出困難者) |
約72,000人 | 約54,000人 | 約58,000人 |
地震が発生する時期や時刻によって異なりますが、もっとも深刻な被害を受ける冬・深夜の場合、建物倒壊等による死者数は11,000人とされています。
この人数にさらに火災等による人的被害を加えると、最大23,000人の死者が出る恐れがあり、この人数は東日本大震災の死者数と行方不明者数を越えた数値となります。
以上は、建物と人的被害についてのシミュレーションでしたが、首都直下地震がもたらすであろう被害はそれだけでは終わりません。
なにしろ政治や行政、経済の中枢機関が集積している東京を直撃する大地震ですから、社会や経済への影響は必至です。
首都圏のライフラインや交通網も寸断され、ひいては日本全国、そして海外へも影響が波及することが想定されます。
首都直下地震による甚大な被害。少しでも被害を小さくする方法はないのでしょうか?
減災の基本!「耐震化」が進めば被害は大幅に減らせます。
死者発生の主な要因は、上記の想定からも分かるとおり、やはり建築物の被害にあります。
つまり「建物の耐震化」が進めば進むほど、被害をどんどん小さくすることができます。
以下の表は、現状の耐震化率が全国平均79%・東京都87%に対し、旧耐震基準の建物の建替や耐震補強工事を行い、現状よりも耐震性を強化した場合の効果を評価したものです。
耐震性強化による被害想定(都心南部直下地震)の推移
耐震化率 | 全国 | 79%(H20) | 90% | 95% | 100% |
---|---|---|---|---|---|
東京都 | 87%(H20) | 94% | 97% | 100% | |
揺れによる全壊棟数 | 約175,000 棟 | 約98,000 棟 | 約63,000 棟 | 約27,000 棟 | |
建物倒壊等による死者数(冬・深夜) | 約11,000 人 | 約6,100 人 | 約3,800 人 | 約1,500 人 |
※建物の耐震化とは、新耐震基準建物への建替えや、旧耐震基準建物であっても新耐震基準並みの耐震性を有するように耐震補強等を実施するものであるが、新耐震基準建物においても地震動の大きさによっては一定程度の被害が発生する可能性がある。
この表からも、耐震化率を高めることで、揺れによる全壊棟数、建物倒壊等による死者数が大きく減少していくことがわかります。
特に木造住宅の耐震補強は重点的に取り組む必要があるとワーキンググループでも討議されており、こうした減災対策の啓蒙が被害を最小限にとどめる上で非常に重要と言われています。
関東大震災の再来!「首都直下地震」はいつ起きる?まとめ
予測すればするほど怖さが増す首都直下地震。
それでも私たちはこうした取り組みから地震についてしっかり学び、いざというときのための準備を推進していくことが重要です。
私たちウッドピタは、こうした地震や耐震にまつわる情報の発信を続けながら、皆様の安心の生活に寄与できたらと思っています。
地震のこと、耐震のこと、工事のこと、これからもなんなりとご相談ください!
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〈参考資料〉
中央防災会議 首都直下地震対策検討ワーキンググループ「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」(2013年12月)