ウッドピタの地震防災コラム

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防災2015年8月27日

9月1日は防災の日…関東大震災を振り返る。

夏休みも残すところあとわずか!
学生のみなさんは、9月1日から二学期が始まってしまいますね~(涙)。
というわけでこんにちは。

ところでみなさん、9月1日が何の日かはご存知ですか?
…ハイ、その通り!「防災の日」ですね。
全国の自治体や学校で、防災訓練やシェイクアウト訓練が行われるあの日です。
それではなぜ、9月1日が「防災の日」になったのかはご存知でしょうか?
答えは、今から92年前に日本を襲った巨大地震「関東大震災」が発生した日が9月1日だからです。
今回のコラムでは防災の日を前にして、関東一円に甚大な被害をもたらした日本災害史上最大級の地震・関東大震災について振り返ってみたいと思います。

目次:

↓ マグニチュード7.9!関東大震災がもたらした甚大な被害

↓ 関東大震災は20世紀以降の日本の地震被害ワースト1

↓ 人命や家屋だけではない…日本の経済に与えた影響

↓ 建築基準法のルーツ?1924年に日本初の耐震基準制定

↓ 9月1日防災の日を前にして関東大震災を振り返る・まとめ

マグニチュード7.9!関東大震災がもたらした甚大な被害

今回のコラムタイトルは「9月1日は防災の日…関東大震災を振り返る」です。
「振り返る」と言いながら、私をはじめ、このコラムを読んでくださっているほとんどの方が関東大震災を体験されていないはずです。
なにしろ92年前の地震ですから…。
時は1923年(大正12年)9月1日11時58分32秒。
神奈川県相模湾北西沖80kmの相模トラフを震源地とする、マグニチュード7.9の海溝型地震・関東大震災が発生しました。
下の図を見ていただくとわかるように、神奈川・東京を中心に、埼玉・山梨・茨城・静岡と、広範囲にわたって震度5~7の大きな揺れをもたらしました。

相模トラフ(出典:「相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)」(地震調査研究推進本部)より)

相模トラフ(出典:「相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)」(地震調査研究推進本部)より)

住家全潰率と震度の分布[諸井・武村、2002より引用]

家全潰率と震度の分布[諸井・武村、2002より引用]

建物の倒壊や山崩れ、崖崩れといった「震動」による被害をはじめ、沿岸部では東日本大震災でも大きな打撃を被った「津波」や、昼食調理の時間帯ということで「火災」による被害も大きかったとのこと。液状化による「地盤沈下」も見られたと言われています。

関東大震災は20世紀以降の日本の地震被害ワースト1

関東大震災の被害の大きさ・激しさは、以下の集計表を見ていただくと、さらによくわかると思います。

関東大震災による住家被害棟数および死者数の集計[諸井・武村、2004より引用]
  住宅被害棟数 死者・行方不明者数
地域 全潰 非焼失 半潰 非焼失 焼失 流失・埋没 住宅全潰 火災 流出埋没 工場等の被害 合計
神奈川県 63577 46621 54035 43047 35412 497 125577 5795 25201 836 1006 32838
東京府 24469 11842 29525 17231 176505 2 205580 3546 66521 6 314 70387
千葉県 13767 13444 6093 6030 431 71 19976 1255 59 0 32 1346
埼玉県 4759 4759 4086 4086 0 0 8845 315 0 0 28 343
山梨県 577 577 2225 2225 0 0 2802 20 0 0 2 22
静岡県 2383 2309 6370 6214 5 731 9259 150 0 171 123 444
茨城県 141 141 342 342 0 0 483 5 0 0 0 5
長野県 13 13 75 75 0 0 88 0 0 0 0 0
栃木県 3 3 1 1 0 0 4 0 0 0 0 0
群馬県 24 24 21 21 0 0 45 0 0 0 0 0
合計 109713 79733 102773 79272 212353 1301 372659 11086 91781 1013 1505 105385

※非焼失の全潰・半潰は焼失および流出、埋没の被害を受けていない棟数。
※津波:静岡県熱海市 6m。千葉県相浜(現在の館山市) 9.3m。洲崎 8m、神奈川県三浦 6m。鎌倉市由比ケ浜で300人余が行方不明。

およそ190万人の方が被災したと言われている関東大震災ですが、そのうち死亡あるいは行方不明になったとされる方は約10万5千人、建物の被害は全壊(全潰)が約10万9千棟、全焼が約21万2000棟と報じられています。
では、この被害の大きさは、最近発生した大地震と比較するとどの程度のものなのでしょうか?
20世紀以降に起きた日本の大地震による被害(死者数)ワースト10を調べてみました。

日本の地震被害(死者数)ワースト10(20世紀以降)[当社調べ]
地震名 発生日 死者数 M 主な被害原因
関東大震災 1923.9.1 105,385 7.9 火災
東日本大震災 2011.3.11 19,074 9 津波
阪神淡路大震災 1995.1.17 6,434 7.3 震動
福井地震 1948.6.28 3,769 7.1 震動
三陸地震 1933.3.3 3,064
(行方不明者含む)
8.1 津波
北丹後地震 1927.3.7 2,925 7.3 震動
三河地震 1945.1.13 2,306 6.8 震動
南海地震 1946.12.21 1,330 8 津波
東南海地震 1944.12.7 1,223
(行方不明者含む)
7.9 津波
鳥取地震 1943.9.10 1,083 7.2 震動

表の通り、関東大震災による死者数は他の地震と比較しても桁が違います。
92年前の出来事ですから、建物の耐震性能や耐火性能はもちろん今の時代と大きな差があり、阪神大震災や東日本大震災と単純に比較することはできません。
しかし、それでもこの地震の規模がいかに凄まじく、10万人以上の方々が犠牲になったことはまぎれもない事実です。
そして上の表でもう1点注目してほしいのが「主な被害原因」です。
ワースト10のほとんどが津波もしくは震動の中、関東大震災だけは「火災」となっています。
地震の発生時間が調理で火を使う昼食の時間帯と重なったと先ほど書きましたが、強風によって瞬く間に火が広がり、火災旋風を巻き起こしてしまったことも、消失被害が広まった大きな要因と言われています。
火災による死者数は9万1000人を超え、全犠牲者のなんと約9割を占めています。
「地震が来たら、まずは火を消せ」
この教訓が、関東大震災の悲痛な被害状況からも、いかに大切であるかがわかると思います。
(ただし今は自動消火機能のある調理機器が普及しており、無理に火元に近づくよりも「まずは身の安全確保が最優先」という指導が増えているそうですよ。)

人命や家屋だけではない…日本の経済に与えた影響

多くの人命を奪い、家屋をことごとくなぎ倒した関東大震災は、当時の日本経済にも大きな影響をもたらしました。
例えば、被害を受けた企業や商店が、多額の決済困難に陥りました。
その影響で支払えなくなった手形のことを「震災手形」といい、政府がその損失を補償する体制をとったものの、戦後の恐慌による不良債権までもが補償対象とされるなどし、こうしたドタバタが昭和金融恐慌を引き起こしてしまったと言われています。
計上すると、関東大震災による経済損失は45.7億円。当時のGNPが約150億円なのでその3分の1、国家予算15億円で考えると、なんとその約3倍以上に相当します。
関東大震災に限らず、こうした「震災不況」は被災地だけでなく、国家全体に長期的かつ大きな損害をもたらしてしまいます。

建築基準法のルーツ?1924年に日本初の耐震基準制定

耐震補強を取り扱う当社としてひとつ気になるのが、当時の建物の耐震性です。
東京では歴史上有名な浅草の凌雲閣(地上12階)が全壊、ほかにも多くの官公庁の建物や文化・商業施設が全壊・半壊などの被害を受けました。
また、横浜の官公庁やホテルなどは石・煉瓦造りの洋館が多く、それらは一瞬にして倒壊してしまったそうです。
そんな中、大正~昭和時代の建築家・内藤多仲(1886-1970)が設計し、震災の3か月前に完成した日本興業銀行本店はなんと無傷
内藤さんは「従来の柱と梁のままでも、要所要所に強い壁(耐震壁)を造れば、充分に丈夫な建物になる」と主張しており、その理論に基づいて造られたのが日本興業銀行本店でした。(残念ながら現存はしません。)
ちなみに内藤さんは「耐震構造の父」とも呼ばれ、東京タワーや名古屋テレビ塔も設計したスゴイ人です!
以来、耐震建築への関心が一気に高まり、震災の3年前(1920年)に施行されていた市街地建築物法の改正が行われ、1924年に日本で初めて耐震基準が規定されました。
現行の耐震基準を定める建築基準法は、この時の法改正が基となっています。

9月1日は防災の日…関東大震災を振り返る・まとめ

関東大震災のまとめ、いかがでしたか?
現代の地震に対する取り組みや先進的な技術・工法は、当時の被害や大勢の尊い犠牲の上に成り立っていることがわかっていただけたかと思います。
私たちウッドピタは、こうした地震や耐震にまつわる情報の発信を続けながら、皆様の安心の生活に寄与できたらと思っています。
地震のこと、耐震のこと、工事のこと、これからもなんなりとご相談ください!



〈参考サイト〉
●中央防災会議「1923関東大震災」報告書第1編(2006年7月)
●気象庁ホームページより 各種データ・資料 >過去の地震津波災害
●財政金融調査室「関東大震災における政策的対応」(2011年4月)